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[05.09/]
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どうしてこうなった?
テイトの家の台所にはテイトとその叔父と弟、隣のミカゲ、そしてオレが居る。
ミカゲは玄関先で簡単に紹介されてからも、ずっとテイトの傍を離れない。
「久しぶりに賑やかな晩御飯になりそうだな」
テイトの叔父はにっこりと微笑みながら買い物袋をテーブルへ置くと、買ってきた食品類を冷蔵庫へと移し入れた。
玄関先でテイトとミカゲが再会の抱擁をしているところへテイトの叔父と弟が帰宅した。
簡単に挨拶をして、何故か全員台所へと流れ込んだ。
「君、嫌いなものはある?」
「いえ、ないです」
「あ、そう、なら良かった。嫌いなものがあっても食べさせるのが我家の流儀だから」
叔父はニヤリと笑うといかにも子供が嫌がりそうな黄色野菜を取り出した。
「あ、ピーマンはやめて」
テイトの弟が叔父の脚にしがみ付いた。歳は7歳か8歳といったところか? 叔父と弟の攻防戦が微笑ましく、沈みかけたテンションが少しだけ浮上した。
「あの、オレも手伝います」
「そう? ありがとう、じゃ、この野菜を切ってもらおうかな。野菜炒めにするから」
「わかりました」
オレは包丁を握ると水切り籠から野菜を取り出し、手際良く小口切りにしていった。
「普段からしてるの?」
「え? まぁ、料理は嫌いじゃないんで」
「感心だねぇ。それに比べてテイトは……」
叔父は言いかけると襖を開け放った隣の和室で盛り上がっているミカゲとテイトを振り返った。
「案外、不器用ですよね」
失礼だと思いつつオレは苦笑いを浮かべた。
「そうなんだよ、包丁なんて怖くて持たせられない」
そう言って叔父は難しい顔を作った後、苦笑した。
「ねぇ、ねぇ、お兄ちゃん、ピーマンとニンジンはもう半分に切ってくれる?」
弟が切実に訴えるからオレは「いいよ」と答えるとさらに半分に切り分けた。
途端に弟の顔に笑顔が戻り「ありがとう」とお礼を言った。
可愛い……テイトの子供の頃もこんなだったのだろうか?


「いただきまーす!」
そう言って当然のように食卓に並ぶミカゲが手を合わせた。
どうして、オマエがまだ居る? ここんちの子供か?
オレが呆気に取られていると、テイトが「ミカゲは家族みたいなもんだから。この辺じゃ、みんなそうだよ。オレもカペラもミカゲんちでご飯食べたりしてるし」と言って笑った。
「へぇ~」
オレは作り笑顔でその場の雰囲気を壊さないように極力努めたが、内心穏やかではない。寮でのオレのポジションがここでは全てミカゲに奪われている。
それは、仕方の無いことだが、こう堂々と見せ付けられると流石のオレも気が滅入る。

来るんじゃなかった……
いっそ、この場からテイトをさらって逃げ出すか!

良からぬ衝動を抑えて、オレは作り笑顔をミカゲへと向けた。


つづく


※祭りはどこへ?www

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